格好つけ過ぎでは? ー ベレト
みなさんはFE風花雪月のエーデルガルトというキャラクターに対してどのようなイメージをお持ちだろうか?
ゲームをプレイした方、特に紅花ルートを進んだ陛下の忠臣なる方々はこのように思ったのではないだろうか。
- 大きな声では言えませんが…陛下は時々、童心に帰るときがあると言わざるを得ませんね…。(V家Hさん)
- エーデルガルトさんは…少しですけど、拗らせているんじゃないかなって。(V家Bさん)
- よくわかんねえけど、エーデルガルトの言葉は聞いてて恥ずかしくなるときがあるんだよな…。(B家Cさん)
※実際のキャラクターのセリフではありません。
そう、厨二病だと。
確かに、冒頭の画像のようにいきなり、
シュヴァルツァアドラーヴェーア
なんて言われたら、格好つけ過ぎでは?と思うのは無理もない。(ドゥーン⤵⤵)
だが、待って欲しい。
軍隊に付けた名前が「ほんの少し」恥ずかしいものだからと言って、本当に彼女が厨二病だと言うことになるのだろうか?
以下、その点について考察していきたい。
そもそも厨二病とはなにか?
考察をする前に、この記事内で扱う厨二病という言葉の意味を定義をしておきたい。
検索してみると、つぎのような説明がなされている。
中二病(ちゅうにびょう)とは、「(日本の教育制度における)中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動」を自虐する語。転じて、思春期にありがちな自己愛に満ちた空想や嗜好などを揶揄したネットスラング。
ー Wikipedia 中二病
中二病(ちゅうにびょう)は、中学2年生(14歳前後)で発症することが多い思春期特有の思想・行動・価値観が過剰に発現した病態である。
ー ニコニコ大百科 中二病
多くは年齢を重ねることで自然治癒するが、稀に慢性化・重篤化し、社会生活を営む上で障害となることがある。特異的な身体症状や臨床所見は見出されていない。
上記の記述を参考にすると、厨二病は「若い」+「恥ずかしい言動」であると言えそうだ。
作中プロフィールによると、エーデルガルト様の年齢は17歳。(本編開始時点)
十分に「若い」。
つまり、「恥ずかしい言動」をしているか否かが争点と言える。
となると、検証方法はひとつ。
シュヴァルツァアドラーヴェーアという名前が本当に恥ずかしいかを検証していくことである!
シュヴァルツァアドラーヴェーアは恥ずかしいのか?
名前の由来
まず、考えたいのがシュヴァルツァアドラーヴェーアの名前の由来である。
これはそもそも作中において、黒鷲遊撃軍の当て字になっており、これをドイツ語にしたものだ。
実際、分解してみるとつぎの通りである。
シュヴァルツァ…「黒い」を意味する「Schwarz」から。
アドラー…「鷲」を意味する「Adler」から。
ヴェーア…防御、抵抗、転じて「防衛軍」を意味する「Wehr」から。
ヴェーアの部分が防衛軍になるのは気になるが、ほとんど日本語からドイツ語への直訳である。
そう考えると案外順当な命名なのではないかと思えてくる。
では、現実の軍隊の名称と比較してみるとどうだろうか?
会津藩の白虎隊
「白虎隊」の名前の由来となった「白虎」
国内で同様の名付けと言われれば、白虎隊が挙がるのではないだろうか。
「白い」で「虎」というのはまさに、「黒い」で「鷲」と同様のネーミングセンスに思える。
白虎隊というのは幕末における会津藩(いまの福島県)に存在した軍隊である。
この名前の白虎というのは中国の神話に由来している。
白虎は「四神」と呼ばれる四神獣の一体であり、それぞれが東西南北に対応する守護神だそうだ。
うーむ、神由来のネーミングと聞くと、それだけで厨二病っぽく感じるところだ。
では、白虎隊をドイツ語に直訳してみるとどうだろう?
「白い」は「Weisser(ヴァイサー)」、「虎」は「Tiger(ティガー)」とすると…
”ヴァイサーティガーヴェーア”
これがエーデルガルトナイズした白虎隊の名称である。
ドイツ語にすると途端に厨二心がくすぐられるから不思議なものだ。
だが、もとの白虎隊という名称は、やはり我々日本人からしてみれば厨二病っぽさは感じられないように思う。
シュヴァルツァアドラーヴェーアという名前も我々がドイツ語に馴染みがないゆえに厨二臭く感じてしまうのではないだろうか?
ハンガリー王国の黒軍
「黒軍」の騎士、黒い。
国外の例も見てみよう。
東欧のハンガリー王国にはかつて、黒軍と呼ばれるまさにこの記事にピッタリな名前の軍隊が存在した。
黒軍は1462年にハンガリー国王マーチャーシュ1世により設立されたもので、東欧史上初の常備軍(専業軍人)とされている。
射石砲や火縄銃を大量に装備した騎兵集団であり、当時のハンガリーの領土拡大に大きく貢献したそうだ。
この点は、アドラステア帝国の領土拡張に大きく貢献したシュヴァルツァアドラーヴェーアとよく似ている。
では、この黒軍と言う名前はどのようにして名付けられたのだろうか?
ハンガリー国王のマーチャーシュ1世が厨二病だったからこの名称を付けたのだろうか?
答えは否である。
理由は、黒軍が使用していた鎧の色が黒かったからである。
中世ヨーロッパの甲冑と言えば、光沢のある銀色のものがまず思い浮かぶが、「ブルーイング」という処理によって表面を酸化させると、色が青黒くなるらしい。
これにより、鎧が錆びることを防ぐとともに、メンテナンスに掛かる費用が安く済んだそうだ。
決して、国王が厨二病だから軍の名前に黒と付けた訳ではない。
となると、シュヴァルツァアドラーヴェーアに黒がついているからといって、厨二病っぽいネーミングだとは言えないのではないだろうか?
黒鷲のわけ
アドラークラッセの名付け親、レア様(多分)
さて、ここまで読んだ読者の方々の中には、「おや?」と思った方も多いのではないのだろうか?
「黒軍の話はどこかで聞いたことがあるような気がする…」と。
もちろん、黒軍を既にご存知だった方もいるだろうが、そうでない方の中にもそう感じたという方がいるはずだ。
それもそのはず、この話はなんと、風花雪月のゲーム中にも出てくるのである。
具体的には、EP.1 三つの学級の学級選択後、フェルディナントから聞くことができる。
先生は我らが学級の名の由来を
知っているか?
鷲はアドラステア帝国の国章に描かれた
双頭の鷲から……
黒はかつての帝国の鎧の色から来ている。
それを合わせて“黒鷲の学級”なのだよ。
そう、黒鷲の由来もアドラステア帝国の鎧の色が黒かったことから来ているのだ。
まさか、名前の由来も黒軍と一緒だとは。
もしかしたら、実際の名付け時に開発者も黒軍の話を参考にしたのかもしれない。
そもそも、学級の名前をスライドして持ってきたなら、アドラークラッセの名付け親であるレア様も厨二病ということになってしまうのではないか?(セテスとかの可能性もあるが…)
そう考えると、シュヴァルツァアドラーヴェーアという名前はむしろ正統派な感じがするネーミングではないか!!
全然、シュヴァルツァアドラーヴェーアは恥ずかしいネーミングではないのではないか?
シュヴァルツァアドラーヴェーアは恥ずかしくなんかない!!
素晴らしい名前です、陛下!
一晩は掛かり過ぎなのでは?
シンプルな名付けに一晩掛ける陛下
「一晩も掛かったのか…」とでも思っていそうな先生
さて、シュヴァルツァアドラーヴェーアは恥ずかしくないということになったが、ここに来て別の疑問が浮かんでこないだろうか?
黒鷲遊撃軍の由来が黒鷲学級であるならば、むしろシンプルな名付けである。
その割に、エーデルガルト様はこの名付けをするのに一晩かけたと発言している。
むしろ、時間が掛かり過ぎではないだろうか?
これは言わば、「江戸」にある「城」に「江戸城」、「東京」にある「タワー」に「東京タワー」、「ガルグ=マク」にある「修道院」に「ガルグ=マク大修道院」と名付けるのと同義である。
名付けてと言われて一番最初に思い付きそうなくらいシンプルな名前だ。
それに一晩掛かった…
これはイレギュラーが発生したと考えざるを得ない。
きっと、安直なネーミングにも関わらず、一晩掛けなくてはならないほどの事情があったに違いない。
その点について考えてみよう。
複数候補説
まず、思いつくのが、ほかにも複数の案を考えていたという複数候補説だ。
シュヴァルツァアドラーヴェーアのみなら5秒で思い付くかもしれないが、ほかにもさまざまな案を考えていたとしたら。
想像してみて欲しい、夜な夜な一人、自室で机に向かう陛下の姿を…
その聡明なる頭脳から排出される様々なカッコ良い名前の数々。
あれも良いし、これも良い…どの名前も捨て難いわ!
そんな風に思い悩む陛下だったが、自分に付いて来てくれた学友や先生のことを思い出す…
誰も付いてこないことを恐れていた陛下。
皆が付いて来たときの喜びは推して知るべしである。
ああ、皆付いてきてくれてありがとう。皆との思い出の詰まった場所、アドラークラッセ…
そうだ、あの学級の名前を取ろう!
そのように考え、最終的にシュヴァルツァアドラーヴェーアに落ち着いた…
このように考えられないだろうか?
付いてきてくれた皆の恩に報いたいがために、この名をつけたのだとしたら…
そのように考えたら、少し温かい気持ちになるのではないだろうか?生暖かい気持ちは最初からあったかもしれないが。
そもそも、明日戦いなのに前日に名前を考えるのはおかしい。
もともと別の名前を考えていたが、皆が付いて来てくれたので、急遽前日に名付けを変更した可能性は大いにある。
そう考えたら、前日に一晩考えざるを得なかったのも納得できるのではないだろうか?
ヒューベルト戦犯説
つぎに挙げる説は、ヒューベルト戦犯説である。
陛下が名前を発表する前のヒューベルトのこの発言を、皆さんはお覚えだろうか?
遊撃軍…機動力の高い迎撃部隊のことらしい
そう、作中でシュヴァルツァアドラーヴェーアが遊撃軍であるということを最初に明言したのは、彼なのである。
また、先生に名前を伝える前に、2人で軍の名前について会話をしていたことが考えられる。
とすると、この様な展開は考えられないだろうか。
実は、もともとは別の名前を、陛下は考えていたのである。
それをまず、ヒューベルトに伝えようとする陛下…
ヒューベルトもきっと、気に入ってくれるに違いないわ!
改心のネーミングを胸中に、心躍る思いでヒューベルトに駆け寄る。
ねえ、ヒューベルト。新しい軍隊の名前は何が良いと思う?
もったいぶって既に決まっている軍の名前をあえてヒューベルトに問い掛ける陛下。
そうですね…皇帝直属で、戦場を自由に移動できる遊撃軍ですから…
遊撃軍…黒鷲…ハッ!
と、そのとき、ヒューベルトの発言によりもうひとつのものすごくカッコ良い案を思い付いてしまう!
どうしましょう、前の名前も良いけれど、コチラの方が素敵ではないかしら…
どちらの名前も捨て難く、一人悩み続ける陛下。
やっと、シュヴァルツァアドラーヴェーアに決定する頃には、もう外は明るくなっていた…
というのが、ヒューベルト戦犯説である。
あとから同じくらい良い案が思い付いたら、さすがに陛下も決めるのに時間が掛かるだろう。
そう考えると、一晩掛かったというのにも納得できるのではないだろうか?
こうなると、実はヒューベルトが名前を付けたという、ヒューベルト名付け親説も思い付く。
しかし、その場合は、発表の際にふたりで考えたと陛下自ら発言すると思われるので、命名したのは陛下だろう。
消えた「黒」説
最後の説として、消えた「黒」説を挙げたい。
皆さんは、ここまで名前の由来について見て来て、ある違和感を覚えなかっただろうか?
名前が厨二臭いということではない。
アドラークラッセという名前についてである。
上でも記したように、シュヴァルツァアドラーの直訳は黒鷲である。
では、アドラークラッセは?
そう、鷲学級だ。
「黒」はどこに消えたのだろうか?
陛下がもし、同じ疑問に思い至ったとしたら、こうは考えられないだろうか…
新設する軍の新しい名前を決めた陛下。
シュヴァルツァアドラーヴェーア、うーん、我ながら良い名付けだ…
そう思いながら、この名前を聞いて意気軒昂となる皆の姿を想像する陛下。
ああ、公表するのが待ち遠しいわ!
なんせ、1年間一緒に過ごした思い出が詰まった、アドラークラッセの名前を付けるのだから。
皆喜んでくれるに違いない。
…あれ、でもちょっと待てよ?
よくよく考えたら、アドラークラッセという名前はおかしくないだろうか?
わたしは、黒鷲学級から黒鷲を持ってきて黒鷲遊撃軍と名付けた。
それを訳したらシュヴァルツァアドラーヴェーアになった。
黒鷲学級も”シュヴァルツァ”アドラークラッセにならないとおかしいのではないか?
そう、考えた陛下はガルグマクに士官学校が創設された時期の文献を漁る。
…が、どこにも「黒」の消えた理由が書いていない。
いったい、どこに消えたの?
母親探す前に、消えた「黒」探しなさいよ!
そんなことを考えながら、この謎を追っているうちに、夜は過ぎるのであった…
というのが、消えた「黒」説である。
それを言うなら、ルーヴェンクラッセは「青」、ヒルシュクラッセは「金」が消えているので、ちょっとした大事件になってしまうが。
レア様(トマシュとかかもしれないが)はどうして、学級の名前から色を削ったのだろうか?
謎である。
最後に
ここまで書いてきたようにシュヴァルツァアドラーヴェーアはまったく恥ずかしい名前ではない。
道端で叫んでもまったく違和感のない、よくある名前である。
ゆえに、陛下も厨二病ではない。
なので、みなさんも、つぎに紅花の章をプレイするときは、ぜひとも「素晴らしい」と答えてあげよう。
陛下との友好度もアップするぞ!
陛下を喜ばせてあげよう!
それにしても、学級名から色はなぜ消えたのだろうか…
案外、ゴールデンナーヒルシュクラッセだとあんまりだから…とかかもしれない。